最近では声優への舞台出演のオファーが増えてきています。声優さんが舞台をすることの意味について、声優マネージャーの視点で語りたいと思います。
はじめまして、ぶるまんと申します。
声優事務所で新人発掘や育成を行っており、その経験を踏まえて声優志望の方にオーディション対策や声優業界に関しての記事を発信しています。
声優になりたい、声優事務所の担当がどんなことを思っているか知りたいという方に是非見ていただきたいです⭐
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もくじ
はじめに
昨今、大きな舞台、小さな舞台関わらず声優さんが舞台に出ている傾向があります。
一般的に「声の役者」と言われている声優が舞台に出るのは、どういうメリット・デメリットがあるのでしょうか。
そして、どうして舞台に出る声優が多くなってきたのでしょうか。
じつは、この最近の声優業界の現状が今の状況を作ったと言っても過言ではありません。
事務所は「声優を育てるために」といい出演させますが、果たしてその通りなのでしょうか。
声優はもともと舞台俳優だった!?
そもそも声優というのはNHKの前身の東京放送局がラジオドラマというのを始めるにあたって、声だけで演技を行う専門の俳優としてラジオドラマ研究生を募集したところから始まります。
そこで選ばれた12名の役者が日本の最初の声優と言われています(応募は百数名くらいたったそう)。
その中のほとんどは新劇と言われるいわゆる西洋の舞台を演じる劇団の役者さんで、その方々は舞台と兼業してラジオドラマ俳優も行っていました。
そこからさらに、NHKがラジオドラマ専門の俳優を養成する東京中央放送局専属劇団俳優養成所の研究生を1941年に募集し、1943年に養成を終えた第一期生がデビューを果たしていきました。
このころから「声優」という言葉が使われるようになったと言われていて、まだテレビ放送がない1950年代はラジオドラマが流行り、今の声優と同じくラジオドラマ俳優に人気が集中して第一期声優黄金時代があったと言われています。(声優がスターだったのはこのころにもあったんですね!)
テレビ放送が始まると、まだ国内にコンテンツが少ないということからアメリカから映画やアニメーションが輸入され、声優による日本語吹き替えの需要が多くなり、声優の地位は確立されていきました⭐
そして、日本のアニメ文化の発展に伴いテレビアニメに声を当てる仕事を一般的に「声優」と呼ぶようになってきたんですね!
映画の吹き替えを担当した声優は人気が高く、追っかけもいたくらいだそうです。
とにかく、そもそもは「役者」というくくりで声優が求められ、舞台役者さんたちがラジオドラマや吹き替えに演技の幅を広げた形で始まっています。
テレビや映画の俳優に関しては協定などの関係から吹き替えやラジオドラマなどへの出演が認められておらず、舞台俳優が「片手間」でやっていたのが声優でした。
まだ声優の歴史は浅く、70年ほどなんですね。
よく、「声優は声だけですべてを表現するからムズカシイ」「役者は声だけじゃなく表情、動きでも表現するからムズカシイ」などの無意味な論争が繰り広げられますが、基本は全く同じです。
養成所でもまずは動きから入るというところも多いくらい、声優にとっても「体全体で表現する」というのは大事なのです。
専門学校も養成所も最初は舞台演技から!?
専門学校や養成所で基礎で行う「活舌トレーニング」「感情解放」などのトレーニングは、すべては舞台発祥のトレーニングです。
今ベテランと言われている声優さんのワークショップなどを聴いていても、声優も「声だけ」ですべてを伝えているのではなく、ちゃんと少なからず動作はしているし、イメージで体を動かしていると言っています。
例えば、自分が経験したことのない動きを言葉で表現するときに、まずは自分で動いてみないと絶対に分からないですよね?
もしくは、似たような動作や情景を思い浮かべながら声の演技をすると、リアルなものになります。
音響監督さんのワークショップでも、まず台本の読み合わせをするときにある程度読み込んで読解したら、実際身振り手振りをやって演じてみるということも良くやります。
それだけ、まずは具体的に動いて「動作」「距離感」「感情」をイメージすることは大切なのです。
新人声優にはまず「舞台に出ろ!」は正解??
先ほども述べましたが、もともとの「声優の演技」というものは、舞台で演技をする俳優さんの演技が基礎となっています。
今ではだいぶデフォルメされてしまったり、演技の上辺だけをくみ取ってモノマネしたような「量産型の声優」が増えてしまいました。
その中でも、間違いなく長く売れている人はちゃんと深いところから売れている声優さんの技術を感じ取って自分のものにしています。
全員が「感覚」だけで声優の演技を理解するのは不可能なので、一つの手段としての舞台にでるということは、私としても賛成です。
出来れば、2,5次元のようにもともとキャラクターや声優がいる舞台ではなく、ストレートの舞台に出る方がいいでしょう。
舞台稽古は、大体1ヶ月半くらいに顔合わせと読み合わせをして、粒立て、立ち稽古、殺陣付け、ミザンス付けなどみっちり演技に向き合う期間があります。
その間はその役の事だけを考えるため、一つの作品にどのくらい向き合ったら役になれるかの感覚も養うことができます。
ただ、演出家や舞台の作品によってはただただ拘束されるだけでお遊びのような舞台もあるので、劇団や作品は一度見ておいた方がいいと思います。
事務所に所属すると舞台の案件の依頼もくる!?
声優事務所でもアニメやゲームの案件だけでなく、2,5次元舞台、ストレートの舞台など色々な案件の仕事の話があります。
ネルケやマーベラス、東宝のミュージカルなど大きい案件に関してはオーディションを行うのですが、小さい劇団の公演に関してはそこまで舞台に出るのは厳しくありません。
こういった時代というのもあるので、声優さんはお客さんが呼べるということで舞台制作の劇団もすすんで声優を起用する傾向が多くなってきました。
新人声優も、第一候補の声優さんがだめな場合「〇〇はスケジュール厳しいんですけど、是非新人の〇〇をお願いできませんか?」という形で舞台が決まったりします。
今声優になりたくて事務所に入った方の大半は舞台をやってみたいという方が少なく、最初は、戸惑いながらも同じ演技だしマネージャーが進めてくれたから出てみよう。というテンションで舞台に出るのですが、それによって舞台の難しさや過酷さを知り病んでしまうという方も多いです。
小さな舞台は、ギャラも2か月拘束されて数万程度、毎日朝から晩まで稽古と、部活よりハードなものが待っています。
中途半端な気持ちでチャレンジすると絶対に途中で心が折れるので、ちゃんと「演技を学びに行く」という気持ちを持って挑戦してみてください。
有名声優になると舞台や朗読劇のギャラもすごい!?
こうした新人時代の下積みもあり、舞台で経験したことも声優に行かせるようになり、声優として一人前になってくると、新人時代とは違った大きな舞台の案件が舞い込んできます。
もちろん大きな作品であればオーディションを受けなければいけませんが、お客さんを持っているだけでも、受かる確率がだいぶ違います。
舞台は集客、グッズで稽古から本番の制作費を賄わなければいけないので、かなり集客に関してはシビアです。
そのため、声優さんの出演する舞台というのは劇団からしてもすごくおいしいのです。
お客さんがかなり呼べる人になると、1ステージ10万くらいもらう人もいます。
朗読劇であっても稽古1~2回で本番1ステージ10万くらいですかね。
さすがに舞台で稼げるというところまではいけませんが、10ステージあったら…と考えるとすごい額ですよね。
とにかく、声優は舞台演技も知っておいて損はない!
色々と声優の成り立ちから話してきましたが、声優にとってなんでも「経験」は財産です。
全て演技に生かすことができるので、それに直結する違う形での「演技の経験」で得られる経験値ははぐれメタル並みです。
ただ、舞台周りの役者さんは声優とは違った意味で癖のある人が多いです。(結構パリピっぽい人もいる)
そのところは注意して「こういう人もいる」くらいで接している方がいいかもしれません。
その上で自分の演技の表現方法を見つけていきましょう。
舞台に出ることによって、声優は
ポイント
演技の幅が広がる
動きで演技ができるようになる
距離感を掴みやすくなる
相手との対話をイメージしやすくなる
といったメリットがあるので、もし機会があるのであればチャレンジしてみてくださいね⭐
舞台演技のデメリット
舞台演技は、よほど大きなハコでない限り、ピンマイクなどをつけて出ることはありません。なので、地声で会場のお客さんに聞こえる声で演じないと声が届きません。
基本大きな演技になってしまうのでマイク前の演技と若干違う部分もあります。
その中で間違った発声で喉だけを使って声を届かせようとしたり、それが悪い方向に癖になってしまうと、細かい息芝居ができなくなったり喉を壊したりしてしまうこともあります。
もちろん、本物の舞台俳優さんは小さな演技も響かせて会場に聴かせることができます。
それは、本当に演出の方がしっかり指導してくれる劇団の舞台に出るしかないです。それは縁ですね。
まとめ
色々舞台俳優と声優の演技の事について話してきましたが、個人的には舞台に出ることは賛成派です。
ゲームばかり出ている声優だとどうしてもマイクに向かって演技しがちになってしまうし、「相手」を意識して演じることができる舞台の経験は大事です。
声優でもアフレコ現場でも相手を意識して演技ができていない人も多いので、まずは一度舞台をなんでもいいので見に行ってみることをお勧めします。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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